チームとしま(豊島区及び民間企業10社)による豊島区池袋ブース

台湾最大の旅行博である「2024 ITF台北国際旅行博」(以下、ITF)が11月1~4日の日程で開催された。今年は開催前日に台湾が台風に襲われ、現地自治体による出勤停止命令が出されたことから、毎年前日に開催されているBtoB旅行ビジネス商談会が中止になったり、ブース設営日が1日減るなどのトラブルに見舞われ、出展団体は対応に忙殺されたと推測されるが、ふたを開けてみれば日本ゾーンは連日盛況、通路を歩くのも難しいほどの賑わいだった。ITF全体としても、会期4日間の入場者数は364,563人となり、前年比5.83%増、コロナ前2019年の384,834人と比べてもあと一歩という、台風直撃の影響を感じさせない結果となった。

今年のITFはコロナ前の2019年と同様、会場である南港展覧館の1階(海外旅行)と4階(国内旅行)で開催された。日本ゾーンには98団体が出展、小間数にして182小間と、会場1階の約4分の1を占める大きさだった。出展団体は自治体、宿泊施設、鉄道、観光施設、商業施設、旅行サービス、メディアなど多岐に渡り、そのアプローチ方法や訴求内容も、これまで以上に多様化した印象だ。

日本航空(JAL)ブースでは、日本の8自治体がミニブースを設置。

印象に残ったブースとしては、まず、「チームとしま」ブースが挙げられる。東京都豊島区と池袋に拠点を置く民間企業10社(サンシャインシティ、harevutai、アニメイト、WACCA、西武百貨店、ホテルメトロポリタン、東武百貨店、PARCO、ビックカメラ、GiGO)による合同出展ブースで、台湾でも非常に人気がある日本のマンガ・アニメ・コスプレを訴求の中核に据え、豊島区と池袋の魅力をアピールしていた。

豊島区の担当者にお話をうかがったところ、これまで海外への発信をほぼしておらず、インバウンドの訪問意欲が新宿や渋谷と比べ低い状態が続いていたが、そうした中、海外出展経験のある企業側から提案を受け、今回の官民連携によるITF参加が実現したという。豊島区としての出展は初ということで、担当者はノウハウを学びたいとのことだったが、出展経験豊富な企業との連携が功を奏し、傍目からはブースのテーマ性も明確で訴求力が高く、展示やイベントの内容も初出展とは思えないほど充実していると感じられた。また、池袋コスプレ大使のコスプレイヤー4名と共に豊島区長も自らコスプレをして参戦するなど、本気度もうかがえる内容で、「ベストパフォーマンス賞」の受賞はしごく当然だったと言えるだろう。

そのほか、連携により効果を高めていたと感じられたのが、日本航空(JAL)ブースだ。日本航空は昨年と同様、ブース内に北海道東部(釧路市、網走市)、青森県、山形県尾花沢市、兵庫県、岡山県津山市、高知県梼原町、鹿児島県奄美群島がミニブースを設置していた。来場者はデスティネーションが想像しやすくなり、訪問意欲につながるという直接的なメリットがある。

日光市と東武グループは、中央にミニステージを配置してブースを連結。(東武グループ提供)

東武グループと日光市は今年度の台湾向け施策において、商談会やセミナーの開催など活発に連携を行っているとのことで、ITFでも中央にミニステージを配置し、隣接したブースをつなげるかたちで出展をしていた。写真を見てもわかるように、連携による出展でまず挙げられるメリットとして、ごく単純なことではあるがブースが物理的に大きくなり、それだけでも来場者の注目を集めることができる。また、ミニステージを共用のフォトスポット等でも活用するなど、来場者へのアプローチの幅が広がるというのも利点だ。

台湾人の訪日旅行で主流となっているFIT客にとって、デスティネーションが魅力的でもアクセスに不安があった場合は訪問の優先順序が後回しになりがちだが、東武グループと日光市の連携では、この問題もうまく解消できていたように思われる。デスティネーションへの期待に加え、台湾でも話題のスペーシアXに乗車するといった鉄道での楽しみ方も併せて提案することで旅の魅力が倍増し、訪問意欲をさらに高めることができる。

以上で紹介したように、官民の連携によって得られるメリットは、来場者の目を引くブースの設営、出展ノウハウの共有、相乗効果や相互補完など、いいこと尽くしのように感じられる。また、台湾の旅行博は概して商品即売会といった側面が強く、来場者もお得な商品の購入や優待に期待している。そうした台湾独自のニーズに応えるため、自治体が実施できない商業活動を民間企業が担当する、といった役割分担を活かした連携も可能となる。

熊本県ブースで提供されていた阿蘇市のVR体験

そのほかの日本ゾーンの出展団体も、それぞれに独自性をアピールし、全体としてデスティネーションとしての日本が有する多様な魅力が際立つという結果につながっていた。また、今年はさらに具体的で踏み込んだテーマ(例えばスキーや田舎体験など)を提案していたり、来場者にQRコードから現地の情報にダイレクトにアクセスさせていたり、定番とも言えるノベルティ配布の方法や提供グッズの内容に至るまで、それぞれの出展団体が工夫を凝らし、念入りに準備をしてきたことが伝わってきた。昨年は東京観光財団ブースがサイクリングVR体験を提供していたが、今年は熊本県ブース内で阿蘇市がVRゴーグルによる体験を実施しており、新しもの好きな台湾人来場者の好奇心を刺激し、注目を集めていたようだ。

JNTOの調査によると、2023年に訪日した台湾人観光客のうち、団体旅行はすでに約2割にまで減少、台湾人訪日観光客の約9割がリピーターで、47都道府県のうち半数を超える25の自治体において台湾が宿泊人数1位を獲得している。このことからわかるように、現在の台湾人訪日観光客はFITを好み、インターネットなどで収集した情報を駆使して日本の隅々まで訪れ、常にまだ体験したことがない新鮮な旅行コンテンツを求めている。そのため、ITFでの日本側出展団体によるFIT層を強く意識した積極的且つ実用的なアプローチは、ある意味、台湾における訪日市場の現状及びニーズに合致していると言えるだろう。

沖縄県八重瀬町の伝統芸能パフォーマンス
会場4階のメインステージでも、日本の各団体による多様なパフォーマンスやプレゼンテーションが披露された。

ちなみに受賞に関しては、今年は日本ゾーン全体に対して、ITF主催側から「最優秀人気賞」が送られた。これまでは賞の対象が出展団体ごとになっていたため、毎年、 “オール韓国”として1団体名義で出展している韓国観光公社が過去に様々な賞を受賞していたのと対照的に、日本ゾーンは自治体や企業・団体ごとに個別の名義で出展していることから、日本ゾーン人気とは裏腹になかなか受賞に至らなかった経緯がある。

ただ、台湾での訪日人気は突出しており、ITFでの日本ゾーン盛況の実情とそぐわないといった配慮からか、昨年は日本ゾーンとりまとめ役の日本観光振興協会に「最優秀人気賞」が送られた。しかし、とりまとめと日本ゾーン出展団体が使用するステージ提供の団体に賞が贈られるというのは、不公平感が残る側面もあったと言える。今年からゾーン全体に対する授賞が認められたことは、日本から出展する各団体の熱意と努力が、今更ながらもやっと正当に評価されたと言えるかもしれない。

現地の旅行業界誌「TTN旅報」の元編集長である呉学銘氏は、自身のFacebookページで、日本側出展団体が現地旅行会社を通さずに、ディープなコンテンツに至るまで直接来場者に訴求するようになったと、その出展スタイルの変化を賞賛している。その一方で、現地旅行会社の出展については、「台湾の旅行会社は相も変わらず、今まで通りの商品を今まで通り販売して、変化がない」と、やや厳しい論調で指摘している。

現地の報道では、台湾の旅行会社がITFで多額の利益を上げたという記事も散見されるが、旅行博での収益はあくまで一時的なものである。今後ますますFITの割合が高くなると予想される台湾の海外・訪日旅行市場において、旅行会社が収益率の高さを理由に、従来通りの団体旅行商品に固執するのであれば、コロナ後の“リベンジ旅行”熱が去り、航空座席の供給も安定して価格が落ち着いた後、対策をしてきていない旅行会社らはすぐに苦境に追い込まれることだろう。すでにその点に気づいている一部業者(今年の出展から、ブランド訴求に大きくかじを切ったライオントラベルなど)は、すでに路線変更や対応を進めており、現地の旅行業界は今後数年で明暗が分かれるかたちになるかもしれない。

啓示広告(チーズ・アドバタイジング)日本事業部部長 小須田領


チャイナエアラインの台北(桃園)―名古屋(中部)路線は、2024年春から1日2往復を運航している。そのプロモーションを実施するに当たり、名古屋が「喫茶店王国」と呼ばれるほど、独自の喫茶店文化を有している点に注目した。台湾人消費者は訪日リピーターが多数を占め、日本に対する知識も豊富であるため、もはやステレオタイプだったり、表面的な訴求は通用しない。そこで、新鮮味があり、且つ印象に残る切り口として「昭和モダン」をコンセプトに設定し、「ノスタルジックな魅力に溢れる名古屋」の魅力をアピールした。

プロモーションの中核となるランディングページ(LP)では、レトロな雰囲気満点のビジュアルと共に、名古屋及び中部地方の観光コンテンツや交通アクセスなどの基本情報を紹介、また、チャイナエアライン公式サイトの予約ページへのリンクも設置し、ターゲットを航空券購入へと誘導している。

秋以降に訪日旅行の見込みがある個人旅行客をターゲットとしていること、また、紅葉は台湾における訪日旅行のキラーコンテンツであることから、名古屋周辺の紅葉スポットを紹介。

近年、台湾で人気急上昇の日本で楽しむスキーや雪遊び、イルミネーション、いちご狩りなど、冬に名古屋とその周辺で楽しめる体験を紹介。

名古屋ならではの特色として、ノスタルジックな雰囲気に満ちたレトロな喫茶店やカフェを紹介。

訪日旅行の魅力として、真っ先に日本の美食を挙げる台湾人消費者に向け、ひつまぶしや味噌カツ、小倉トーストなど、名古屋ならではの特色ある美食を紹介。

  1. 特定メニューを注文し、イベントサイトに登録すると、チャイナエアライン名古屋往復航空券が当たる抽選イベントに参加できる期間限定イベントを実施した。
  2. チャイナエアライン会員限定の、店内メニューの価格が5%オフになるキャンペーンを実施した。

※2024-2025冬ダイヤ期間以降で新規就航または運航再開が実施される訪日路線を掲載。

旅行予約プラットフォーム「KKday」とレストラン検索・予約サービス「食べログ」が提携、訪日インバウンド向けに日本全国のレストランなど飲食店42,000店舗以上の予約が可能となった。2024年10月15日に、台湾・台北市のKKday台湾オフィスで開催された記者懇親会で発表され、同日、本件のプレスリリースが配信された。

KKdayによると、2024年第1~3四半期、KKdayで販売されている日本での「食体験」に関連する検索数が前年同期比40%増加したとのことで、中でも「オンラインで予約可能な食体験」の検索が大幅に増えているという。こうしたニーズを受け、訪日外国人向けにレストランなどのオンライン予約サービスを開始することになった。

今回の提携を通じ、食べログの豊富な飲食店情報と、KKdayによる台湾を含む16言語・16通貨対応(日本語を含めると17言語・17通貨)のシステムが組み合わさることで、訪日外国人旅行客は母国語でオンライン予約ができるようになり、利便性が大幅に向上するとしている。

KKdayによる日本の飲食店予約台湾向け特設サイト

出典:KKday 2024年10月15日付リリース、台湾各メディア報道ほか


リゾートワールドクルーズ(名勝世界郵輪)は10月18日、傘下のクルーズ船「リゾートワールドワン(名勝世界壹號)」の新しい運航計画を発表した。同船は2025年4月30日から11月9日まで、再度基隆を母港として運航され、これまでの沖縄と九州に加え、大阪と高知への新しい航路が追加されており、大阪・関西万博や四国地方探索の旅をする内容となっている。

リゾートワールドクルーズ傘下の国際クルーズ船「リゾートワールドワン」

2025年、リゾートワールドワンの運航回数は今年の2倍となり、運航期間も6か月に延長される。新設された5泊6日の「大阪(和歌山経由)~高知」コース(日曜出発、計15回運航)では、オプションで161か国の展示を見学できる「大阪・関西万博観光ツアー」への参加も可能で、子供連れの家族旅行にはうってつけの内容だ。その他、京都・和歌山・高知の寄港地観光ツアーを選択することもできる。

リゾートワールドワンでは以下の航程も再開

  • 日曜出発:「長崎・鹿児島・那覇5泊6日」コース及び「熊本・鹿児島・那覇5泊6日」の計8コース
  • 特定の日曜出発:那覇・宮古島を訪問する「沖縄総合3泊4日」コース
  • 金曜または特定の水曜日出発:「沖縄3日間(石垣島もしくは宮古島)」コース

出典:七逗旅遊網(7totravel) 2024年10月18日付記事


2024年 1-8月
累計人数
11,388,240
前年
同期比
+55.1%
  2024年8月
人数合計 
1,547,087
前月比

-1.6%

2024年8月 台湾人出国人数及び成長率(目的地別)

2024年1~8月 台湾人の出国人数動向(目的地域別)

2024年1~8月 目的地域別出国人数(単位:人)

出典:内政部移民署、交通部観光署統計資料庫
※上記は出国後最初に到着した国・都市。乗り継ぎの場合なども含むため、実際の目的地と異なる場合あり。


就航都市及び航空会社ごとのフライト数、座席数、搭乗人数、搭乗率を一覧表にまとめています。


今年の「Google I/O 2024」イベントで発表され、先行して米国市場でテスト導入された検索結果概要機能「AI Overviews(AIによる概要)」は、その後インド・日本・メキシコ・インドネシア・ブラジル・イギリス市場での展開を開始、11月上旬時点においては、台湾を含む100か国以上の国と地域においても利用が可能となっている。

従来のGoogle 検索では検索結果を列形式で表示していたが、「AI Overviews」では検索結果からAIが自動で重点・要約を生成し、まとめたかたちでの内容が表示される。そのため、ユーザーはより瞬時に、直感的な方法で情報を取得できるようになった。関連するコンテンツには出典元が明確にマークされており、デスクトップとモバイルデバイスでも同じように検索が利用できる。

Googleでは、今回の「AI Overviews」の拡充により、同機能の利用者数が月間10億人以上になると想定しており、より多くの検索トラフィックを増やす要因になると見込んでいる。また、「AI Overviews」においても、広告コンテンツがサービスの運営コストに運用され、どのコンテンツが広告なのか、或いはスポンサー付きのコンテンツなのかを明確にユーザーに表示するとしている。

出典:Google Products News 2024年10月28日付記事

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